プロジェクトの遅れと向き合うには(メモ)

年末年始の自分への課題図書として、「ブラックスワン」で有名なナシーム・ニコラス・タレブの「反脆弱性Antifragie)」という本を読んでいるなかで、プロジェクトはなぜ遅れるのかという疑問に対する一貫したアイデアが浮かんだのでメモしておきます。

 

「反脆弱性」上巻14章に「グリーン材の誤謬」というエピソードがあります。

「グリーン材」という木材の一種をトレードすることで多額の利益を得ていたトレーダーが、じつはグリーン材の「グリーン」の意味を知らなかった(しかし誰も注目しない材木に関する知識や需要予測などについては誰よりも詳しかった)、というものです。グリーン材でいう「グリーン」のような見えやすい知識はあまり意味がなく、多くの人には見えにくいところに本当に役に立つ知識があることを示しています。(「グリーン」の意味を知るには本書を買ってくださいね) 

 

 

 

ここで、これはプロジェクトの遅れに関しても同じでは、と思いました。

プロジェクト管理をするときの正攻法とされている(PMBOKにも書いてある)、作業の中身をよく知ってタスクを明確化し、順序関係を整理することは、上記でいう「グリーン」側に属する知識で、実際にはプロジェクトを遅延から守ることにはあまり関係がないのでは、と思えてきました。プロジェクトが遅れれば遅れるほど偉い人が出てきてプロジェクトの「中身」を知ろうとするも一向に改善しないこと、ありますよね。本当に大事なのは「遅れそのもの」について向き合うことではないかと。普通にしていると、「遅れ」が一体なんなのかは考えませんよね。

 

遅れへの向き合い方はいくつかありますね。有名なのは「正攻法のリスク管理」「プロジェクトのスケジューリングを工夫する」「プロジェクトの進め方を変える」です。

 

1.正攻法のリスク管理

事前に遅れの要因と影響を分析して、代替策を取ることで最悪の事態を回避したり、ダメージを軽減したりすることです。プロジェクトマネジメントの神様トム・デマルコによる「熊とワルツを」に詳しく書いてあります。 

熊とワルツを リスクを愉しむプロジェクト管理

熊とワルツを リスクを愉しむプロジェクト管理

 

 

2.プロジェクトのスケジューリングを工夫する

こちらもリスク管理の一種ですが、「プロジェクト完了日の分布」を考慮して(通常目標より後ろ側にテールが長い分布になっている=プロジェクトはたいてい遅れ、2倍くらいは簡単に伸びる)、あらかじめ十分なスケジュールバッファを取ることで、スケジュールとコストの最大値を確定、あとはメンバーのがんばりによってスケジュールを前倒しに終わらせれば、コストが下がりサービスも早期開始、みんながハッピー。というやりかたで、制約条件の理論で有名なゴールドラット博士の「クリティカルチェーン」に詳しく書いてあります。 

クリティカルチェーン

クリティカルチェーン

 

 

3.プロジェクトの進め方を変える

そもそもプロジェクトの遅れによる最悪の影響をつきつめて考えると「期日にサービスが全く提供できないこと」ですから、最小限の動くサービスを開発し、それを増築していく進め方にすれば最悪の影響を回避できますのでそもそも「遅れ」の概念がなくなります。アジャイル開発ってやつです。いろいろな本で書かれていますが最近の良い本は、スクラムを発明したジェフ・サザーランド氏の「スクラム」です。

スクラム 仕事が4倍速くなる“世界標準”のチーム戦術 (早川書房)
 

 

今回はアイデアを書き留める目的で書きましたが、このテーマでまだ掘り下げられそうですね。また、「反脆弱性」はリスクへの向き合い方に関する本(あるいは「『反』脆弱性」のように、言語化されていない概念こそ重要視するという態度に関する本)で、「グリーン材の誤謬」のほかにも示唆に富んだ素晴らしい本なのでまだまだ新たな発見がありそうです。